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信賞必罰


株式会社アイテクノ
専務取締役 吉田 照夫

 昨年、阪神タイガースはリーグ3位となりプレーオフに進出したものの、ご存知の通りの結果となりました。シーズンを通して中軸打者や先発投手の予想外(?)の不振を考えるとリーグ3位は出来すぎだったのかもしれません。

 さて、タイガースといえばリーグ優勝の2005年シーズン終了後、保留者続出の契約更改に際し岡田監督は「球団側は『今回の優勝も評価に反映している』とするが、選手側にすれば“ごく少額”の評価としか考えていない。そうした旧態依然の査定法を改め、チーム成績をより重視した信賞必罰制に変えるべきと球団に要望した。」(当時の新聞報道)と発言、選手にエールを送ったとあります。優勝に貢献した選手にはより高く、そうでない選手にはもっとシビアな評価をするべきだ、との監督のコメントは来シーズンに向けより強力なチーム作りを目指す監督としては至極当然の発言であったと思われます。

 「信賞必罰」、広辞苑によれば「賞すべき勲功のあるものは必ず賞し、罪を犯したものは必ず罰すること。すなわち賞罰を厳格に行うこと。」とあります。為政者が国を治めるべき根本原理として説かれた古代中国を起源とする言葉ですが、物事にけじめをつけるという意味としても幅広く使用されています。

 最近我々補償コンサルタント業界周辺でも信賞必罰制に関係する事柄に出くわすことがありましたので紹介させていただきます。

 平成19年度の(社)補償コンサルタント協会近畿支部の陳情・要望活動が昨年7月を中心に実施されました。その際、起業者各位からも様々な要望が寄せられましたが「間違いが多すぎる」「注意を喚起して何年も経過しているにも拘わらず改善の兆しが見えない」、「工法説明が不十分」等、一部の起業者からお叱り受けると共に協会として、どのような対策を採るのかと問いかけがありました。

 この対策としては永年に亘り近畿支部に於いても会員の資質の向上を目指し講演会、研修会が頻繁に実施されて来ました。このクレームの場合、具体的には指摘された事項等については支部報に詳しく掲載され会員にも既に周知されたところです。しかしながら協会としての取り組みには自ずと限界があり、平成19年度要望書では「技術力を重視した発注形態へ移行する体制整備作りについて御配慮を御願いします」と発注者各位に業者選定の厳格化を御願いをしています。言い換えれば技術力に問題のある業者は選択されないような体制作りを御願いしたい、との要望です。求められる品質レベルを維持し、信頼に応えるべく日夜努力している会員の偽らざる声であります。補償コンサルタント協会非会員も含め業界全体のレベル向上が図られ起業者からクレームが一切無い業界となる事が望ましいのは言うまでもありませんが、改善の兆しが見えない様な業者が存在するのも残念ながら現実である以上、起業者各位の姿勢として「必罰」も止むを得ない措置ではないかと考えます。大事になる前に当事者に反省させ、信頼を取り戻す努力を促すことが必要です。

 委託契約については一般競争入札制度の導入により透明性・公平性に関しては大きく改善された反面、低価格落札の横行に伴い粗悪な成果が増大したと各方面からお聞きします。「悪貨が良貨を駆逐する」様な事態を招かないためにも官民一体となった取り組みの必要があると思います。

 「賞」については複数の起業者の方から公共事業に伴う用地取得に特段の貢献をした補償業務等に対する表彰制度があっても良いのではないか、とのお話を聞く機会がありました。全く同感です。設計や工事と違い形としては残らない補償業務は表彰制度には馴染まない、という理由から表彰制度から除外されているとの事ですが、補償事案によっては報告書が筆舌に尽くし難い苦労や努力の賜物であった結果であるのを実際に多く見聞きしています。しかし一方で調査対象物件は基本的には解体され、跡形も無くなる運命にあります。このような特殊な業務であるだけに公共用地取得に特段の貢献があった補償関係業務が表彰されることに大きな意味があるのではないかと考えます。関係各位に於かれましては御検討いただければ幸いです。