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アマゴ釣りとマムシ

代表取締役 武田 政雄
 ((株)関西補償問題研究所)

 貴男の趣味は何ですか!! と問われれば即座に“魚釣り”と返答する他ないいわゆる自他共に認める釣りキチであります。私論ではあるが、釣りの一般的区分とは海釣り(磯・船・投)、川釣り、池釣り、渓流釣りであると考えていますが、私が狙う対象魚の主な魚種としては、(著者の最も得意とする対象魚は赤字印)下記の如きであります。

  海釣りでは、チヌ(黒ダイ)・タイ・グレ・イサギ・ヒラマサ
  川釣りでは、アユ・ウナギ・ハイジャコ・オイカワ
  池釣りでは、ワカサギ・コイ
  渓流釣りでは、アマゴ(アメゴ)イワナ

 協会員の皆様方におかれましても、“魚釣り”が好きな人は大勢いるとは偲いますが、私が今までに経験した世にも恐ろしい“マムシ”の話を少し書く事と致します。

 私は徳島県の山川町と云う自然にスゴーク恵まれた環境で、あの有名な暴れ大河、いわゆる四国三郎吉野川

[少し余談になりますが、今は“第十堰”ですっかり全国的に有名となっておりますが、本当に本当に恐ろしい大河でありまして、台風時には増水した濁流が堤防を越えた事が何回もあり、少し大型の台風時には北岸(左岸)の堤防が切れるか、南岸(右岸)の堤防が切れるかの心配が常にあり、また現実に切れた事もありました。
昔から河川事業においては、100年に1回の豪雨に耐え得る施設を考える!! と云われておりますが、現実の地球環境の破壊は日本の国のみならずまさに地球規模で進行し、異常気象が世界各地で続発している今日においては、100年に一度の豪雨の考え方では、国民の生命、財産は守れないのではないのかと考えております。是非是非早期に第十堰の改修を行って頂きたく思っている一人であります。]

までチャリンコで5分の位置で生まれ育ち、本流の吉野川では、アユ・ウナギ・ナマズ・ハイジャコ・コイ・モズクガニ・テナガエビ・・・・吉野川の各支流では、アマゴがウヨウヨ泳いでおりました。魚釣りは我が尊敬する“父”から伝授を受け今日に至っております。

 さて“マムシ”の話ですが、アマゴと云う魚は山奥い渓流に棲息する魚でありまして、ここぞと思ふポイントに入り、上流へ上流へとポイントを求めて釣るわけでありまして、道無き道を歩き滝を登り、岩壁を超え、山を捲き進むもので“毒蛇マムシ”の聖域に足を踏込む事となります。

事件1  15年程以前ですが、用材林の毎木調査時に奈良県のある渓流に出会い静かに覗くと“アマゴ”の姿が一瞬見え、地元の方に尋ねると“アメゴ”はいてるがこの谷はマムシが多い谷で地元の人は釣らん!! と一言。なんと地元ではマムシ谷と呼んでいる谷でありますが魚影は濃い!! これで決まり!! 
 地元有力者の承諾を得て後日その谷へ“アマゴ”釣りに出掛けたわけでありますがさすが釣人が入っていないので3時間程で25cm前後の良形のアマゴを40匹釣って谷から林道へ上がり長靴を脱いでほっとした所で、いわゆるションベンを林道脇に・・・・・っと1~2歩林道の脇へ近づいた所、右足の脹ら脛(ふくらはぎ)の下をガブリ!!
 ここであわてないのがプロたる証。すぐにその場に座って救急用の袋(腰に常に仕掛けと同様に携帯している)を開けてヒモで膝の下を括り、枝を拾ってグルグル廻す。(ここまで30秒以内!! )これで一安心。タバコを出して一服しながら、ライターで両刃のカミソリを焼き、石の端にそおっと置き、括った足が3分程でキリキリと痛み出す。色を見ると紫色まだまだ・・・足がパンパンに腫れてどす黒くまだまだ5分、痛みが限界・・・限界・・・限界で心臓がキリキリと痛む。足の色は黒に近いドド黒で足は爆発寸前のパンパン(ここまで10分程度)ここでおもむろに先ほどの焼いて石に置いたカミソリを手にとって、ガブリとやられた所をスッパーと深く切る(2~3cm)(必ず血管を避ける事)すると今まで止めていた血がドット1m以上飛んで出る!! 出る!! 血が出切るまでそのままタレ流すことが肝心!! まさに気持ちがスカーッと爽快!! (血の気の多い方は是非お試し下さい。)実に天国!! 天国!! とタバコを一服!! 決して動かないようにして20~30分間。後は、足の腫れと色を見ながら止血をして傷口にガーゼを当てて包帯でグルグルと・・・
 ハイこれで完了!! あとは、温かいお家へ帰って寝るだけ!! 

事件2  同県同渓流に、それから3年後!! 
 今度は15m程度の滝登りで最後の手を滝の上の石に置いて身体を引き上げて、最初に見たものは、身体を支えて引き上げている右手の20cm程向こうにすでにマムシが蜷局(とぐろ)を巻いて頭をもち上げて臨戦態勢で睨んでいる。
 少しでも動けば“ガブリ”しかし75Kgの体重が5本の指に!! 下は15m垂直の岩盤で谷川には岩が乱立している。落ちれば運が悪ければ天国か地獄へ超特急!! 運が良かっても大ケガは当たり前!! ジタバタしたってはじまらねぇ!!
 そこで思い切って右手に力を入れて身体を引上げ滝の上へと思った瞬間に“ガブリ”、人間とは強いものです。“ガブリ”のあとはオリンピックの体操の選手の如く岩盤を蹴って滝の上へ瞬時に立っておりました。今度は心臓に近い所を“ガブリ”とやられましたので、事件1より処理は超迅速にしなければなりませんが、処理方法は同様で完了!! しかし今回は帰路の運転中少し寒気がしましたので念のため救急病院へ立ち寄り診断(医者が云うには、お前さんみたいな豪傑は知らん。しかし、首筋をやられたらお前さんでも、もつまいなけて大丈夫!! との事でお家へ帰ってバッタンキュー!! 

 渓流釣り好きの皆様!! とりあえず地元の人の云う事は聞きましょう!! そして、常に“マムシ用救急袋”(ヒモ、カミソリ、ライター、止血剤、包帯etc)を携帯しましょう。必ず複数人数で釣りをしましょう!!
 私も今年で53才!! 昔みたいに無茶はしなくなりましたが、今までに岩から岩へ飛び移る時に失敗して岩石に直接ニードロップを加えて5時間程度動けなくなったり、(お皿とやらにヒビ!)また、ツララが張る山深い谷では、滝をまいてて20m下の滝壺にダイブしたり(チョー寒かったが無傷)、50mのロープでポイントに入ったが(20分)上がるに上がれず死にもの狂いで4時間も費やしたり(この時は“マムシ”どころか、死を覚悟した)、次のポイントへ移動するのに山を捲き己が山に捲かれたり・・・と色々ありましたが、今だに渓流釣りを趣味とし、ゆったりと楽しんでいます。年々“天然アマゴ”の棲息谷と魚影は少なく、尺物(30cmオーバー)は年に一匹釣れるかどうかとなりましたが、自然を愛し自然に抱かれてゆったり~と、ぼけ~っとするのも実に気持ちが良いものです!!